天皇には刑法というものが適用されないんだらしい。それゆえにポケモンパンを万引しても裁かれないんだそうだ。

日本国の天皇ともあらせられる人間(注:天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ)がポケモンパンを万引きすることは、おそらく未来永劫にして有り得ねぇんだろう。だけど100%有り得ないとは誰にも言えない。

さて、お前がパートとして勤務しているスーパーに陛下がご来店召され、ポケモンパンをその黄櫨染御袍の袂に忍び込ませたとする。

その時、スーパーの店員であるお前はどうする。どう対処する。

◆動機

あらゆる可能性の選択と破棄が行われ、億分の一の確率で天皇がポケモンパンを万引きする未来に到達した。到達してしまったのだ。うん。到達したとして、なぜ天皇は他の、例えばランチパック(ツナマヨあじ)ではなくてポケモンパンを万引きするのか。

知れたこと。ポケモンパンにはシールがオマケでついてくるからだ。

第一パンが製造するポケモンパンには、他にない感じの謎の材で形成されたポケモンのシールが付属する。寧ろシールにパンが付属すると言ってもいい。俺だってスーパーに行くたびにそりゃあ欲しいと思ったもんだ。

ピカチュウが人気だもんで色んなポーズのバリエーションがあって、友達と交換したりしてピカチュウを凄い種類集めてた。多分俺のコレクションは県内随一だったろう。

いや、俺のことはどうでもいい。お前の危機意識についての話だ。天皇がポケモンパンを万引することに対する備えと心構え。

◆犯行当日の朝

天皇が…まぁ、朝起きて…ご飯を食べるだろう多分。

して、朝シャンでしょ。夏だし夜は暑いし蒸すし、クーラーつけっぱだと喉がイガイガするしタイマーとかで消すし。汗もかくよそりゃ。

いや逆だな。ご飯の前に朝シャンだな。

で、昨日のあの茹ですぎて余った素麺とか冷蔵庫でラップされて入ってるから、食べようと思うんだけど一晩たってちょっと団子状になってて、めんつゆに浸してグニグニ押してほぐしながら食べるんだろう天皇も。

窓にかけた簾とかが風でこう揺れて風鈴とかもチリンチリンしてるし、お母さんとか「アンタ今日どっか行くの~?」とか訊いてくるし、「えー。別になんも。」みたいな答えるし今日はホントに特に用事もないから甲子園でも見ながら漫画読もうかなーみたいな。夏だなぁなんて情報量ゼロなことをボンヤリ考えつつ、コロナで甲子園が中止になったことを思い出してちょっと悲しい気持ちになって、

ポケモンパンを万引しようと思い立つ。

なぜと問われても分からない。天皇とはそういうものなんだ。いや、語弊があるな。つまり俺の今言ってる世界線の天皇はそんな感じなんだ。

◆スーパーにて

カレイのエンガワキムチ(激ウマ)の品出しをしているお前は、まず茶色っぽいテカテカした着物を召しつつ黒服をぞろぞろ引き連れた人物が来店する様を目撃し、「あ、天皇のあれって普段着なんか。」と思うだろう。

天皇は天井に目線を送っている。おそらく監視カメラの位置とかこう確認しつつ、何気なく店内を回っているようだ。そこでお前のパート店員としての勘が警鐘を鳴らす。

こいつ、万引するぞ。

とはいえ、黒服が見張っているというか壁のようになっているわけだから現場を抑えることは難しい。窃盗の共謀は共同正犯だぞ!

しょうがないのでお前はバックヤードに戻り、ステルスドローンを引っ張り出してくる。

◆ステルスドローン

技術の粋を結集した万引き検知用小型ステルスプロペラ飛行ドローン「飛燕🥺」のことである。普段は自動運行しつつ充電が無くなったらホームに自動で戻るルンバのような存在だが、専用のターミナルを操作することで自在に操作できる。

ファームウェアのアップデートが週一回かかる仕組みで、怪しい動きをしている人間を自動でカメラ追尾するというAIが実装されている。

ステルス機能としては、プロペラの軸にKURE5-56が吹き付けられているので静かだし、ACU迷彩(UCP)に包まれているため、人間が目視することは難しい。ミノフスキー粒子とかも出してる。

AIの精度も高く、いままで多くの万引き犯に正義の電圧(テーザー銃による)を印加してきた歴戦の勇機であることに異論はない。が、その高度なAIが仇となった。

「おっ天皇やんけ」「天皇は万引きせぇへんやろ」という先入観を持ってしまっていたのだ。しかしその先入観が無ければあわや陛下に電流という事態も有りえたよな。

ともかくドローンを繰って、頭が高いと言われようとも天皇を上から監視。無事にポケモンパン(ピンク色の蒸しケーキ)を窃盗する天皇の映像を捉えた。

◆慈悲

でもちょっと思うのは、天皇も事情があって万引きしているのではないかということだ。小室圭とかに虐められて、足蹴にされて唾を吐きかけられて万引きを強制させられているのではないか。その昔、ゆうたくんがりょうくんに万引きを強いられたという噂を聞いたことがあった。そのことを今でも思い出す。

でも関係ない。良くないことは良くないと、誰かが言ってあげなければいけないのだ。

◆確保

天皇は未だ店内におわして、素知らぬ顔で冷凍食品のホウレン草パスタを眺めたりしている。会計を経ずに店を出たら窃盗。つまり、店内にいる間は万引きにはならない。心臓が早鐘をうつ。

天皇には刑法が適用されないのだ。警察組織や法をあてにすることはできない。ただ人としての道理を説くのみ。人間力が試される。

天皇は魚肉ソーセージを手に取り、レジに向かう。ポケモンパンを会計している様子はない。お前は椅子から立って、バックヤードを後にする。

店から出てしまった陛下にお声がけする。

「おい、天皇っ。」

その瞬間。四方から黒服の集団が襲いかかってきた!お前は腰に帯いた日本刀を瞬時に抜き、先頭の黒服を切り伏せる。ここで口上。

「派遣法3年ルールに職を奪われ十と七つ」

(割愛)

「おまんら、絶対許さんぜよ!」

律儀に言い終わるのを待っていた黒服集団が思い出したかの如く飛びかかる。切っては捨て、切っては捨て。あたりは血の海。

最後に一人残った天皇に、どう声をかけたものであろうか。以下の 1 ~ 4 のうちから選べ。

  1. 親呼ぶからな
  2. おじさんの言うことを聞いてくれたら見逃してあげよう…(ズボンのチャックを下ろす)
  3. 学校に電話するからな
  4. 人間は誰でも間違いを犯す。その間違いに自分で気づけなかったのは悲しいことだ。でも、君はまだやり直せる。間違いを間違いのままにしてしまうことが一番駄目なことなんだ。ここから、今からやり直そう。人を思いやり、自分を大切にし、正しく生きてくれ。それだけが私の願いだ…(ズボンのチャックを下ろす)

せいかいは パッケージの うらがわを みてみてね!

◆エピローグ

あれから4年の月日が経ち、世界は核の炎に包まれた!海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。だが、そこには元気に走り回る天皇の姿が!

「あのときスーパーの人に掘られなかったら、ぼくは今も病院のベッドで天井を見つめてたと思うよ。あの親切な店員さんと出会えた奇跡にマジ感謝ビガップ。俺たち最強のヒップホップ奏でていくビート紡いでいくこのクルーたちとイクぜ a.k.a 日本国天皇インダハウスだイェア(ドゥンチャ!ドゥンチャ!)」

お前「元気そうで良かった。」

めでたしめでたし。

◆結論

元気そうで良かった。元気が一番!