硬いものを食うのが好きで、ぐにぐにと噛み倒すのが好きだ。

するめ、ビーフジャーキー、エビフライのしっぽ、揚げたカワハギのひれ、グミ、ホルモン、スジ張った肉、乾燥こんにゃく、フライドチキンの軟骨、ささみの燻製、フルグラ、セロリ、讃岐うどん。

硬い食品を手に入れようと思えば割と手に入る世の中ではあるが、なかなか手に入らないのが「硬いガム」だ。硬いガムを調べると犬のおやつがでてくる。

小学生くらいのころ、母が「カムゾーガム」というわけわからんくらい硬いガムを俺に給餌していたんだが、あれは本当にうまかった。

もうね、親の仇のように硬い。そして一粒が大きい。砂糖コーティングとかはされてなかったと記憶しているんだけど、例えば机に落とすと「コチ」という音を立てる。また、冷やすと硬さに拍車がかかり、狂気の沙汰、溶けないし割れない飴みたいな状態になる。

初手は本意気で噛みつぶしにいかないと負ける。無意識で食えるものではない。そして味がうすい。キシリトール。

食卓に置いてあるのを、なんとは無しにとって、噛んでいた。その時は「かってーなー」くらいにしか思っていなかったが、今思えば芸術的な製品だった。硬くても砂糖つかってたらだめだし、キシリトールでも甘すぎたらだめだ。色味も優しい感じだったし、パッケージもかわいい。名前もカムゾーガム以外考えられないほど合致していた。

子供のころの咬合力だったんで、今噛んでもそこまで硬くないかもしれない。でもカムゾーガムがあったら食いたい。噛み倒したい。