お前らも書けクズエンジニアども。
(2020/2/18)書き途中だからちょっと読みづらいとことか残ってる。纏まってないし。最初の方わけわかんないし。綺麗にする。
(2020/2/19)ちょっと追記と整理。完成したらタイトル変える。
(2020/3/5)いらないところ削って追記。とりあえず完成。どうしよ。
(2020/3/18)送った。
◆本文
私は東京都のシステム開発企業に勤務するエンジニアです。
Coinhive事件と呼称されている事案について、東京高等裁判所の判決に違和感がありました。現在世界中で運用されているWebサイトの大部分が日本に於いて全て不法になるという事態を懸念して意見書を提出します。
- Webページと「不正指令電磁的記録」について。
Webページを公開する側には、訪問者の「意図」を事前に知る方法がありません。閲覧者が意図を事前に伝えるという仕組みがインターネットに存在しない以上、一定の処理能力がWebページの閲覧の為に使用されることは合意済みと考えざるを得ません。例えば「A」の情報を求める人物が任意のハイパーリンクをクリックしてとあるWebページを訪問した際、「B」の情報しかなかった場合、そのBの情報を表示するために使用された電力や処理について「意図に反し電子計算機の機能が使用された」と表現することは妥当でしょうか。WebページはWebページとして「提供」ではなく「公開」されているものです。
インターネットの利用者は、指定のIPアドレス(URL)で公開されている情報を取得したいという意図以外に望むべくもありません。その取得された情報が正確かどうか、その情報によって何が起きるのかは根源的に利用者個人で制御しなければならず、国家が保護するにしても、その範囲については慎重に検討、議論するべきと思います。
あるいは、Webページに限らず、営業電話、営業FAXは「意図に反し電子計算機の機能が使用された」と訴訟できるでしょうか。それらは不要に紙を消費する上に何の利益も提供しませんし、「閲覧しよう」という意図すら無視して強制的に配信されるものです。
更に言えば、利用者に無断で「1 + 1」を計算することは法的に問題があるのでしょうか?問題が無いのだとすれば、どの程度の計算が問題となり得るのでしょうか。それが周知されていません。 - Webサイトの運営は、(自分でサイトをホスティングする際、)無料では済みません。件のサイトでは閲覧者の求めるであろう情報を概ね提示しており、その上でCoinhiveによりWebページを存続させる費用の一部を賄えるかと検証していただけにすぎません。マイニングをしなければ当然ながら赤字で、負担になります。場合によりサイトは閉鎖されるでしょう。その赤字を利用者に多少なり負担してもらおうという発想は社会的に許容されないものでしょうか。私は許容されるものと考えます。理にかなっており、私個人の主観的な感覚とは思えません。警察組織からの周知、指摘のない家宅捜索と逮捕、また高等裁判所の先の判決は不意打ちも同然です。今後の情報社会の広がりを阻害するものであり、インターネットと日本国民に不利益を引き起こすものです。
- CoinhiveとWebページ上の広告について、有罪無罪の線引きが不明瞭です。私は、Webページが広告を表示することを許可したことはありません。広告は、表示されて目に映った時点で既に「利用者に無断でCPUを提供」させ終わっています。先の有罪判決ではCoinhiveが不可視であることを問題としていましたが、それが目に映るかどうかは問題になりません。なぜなら広告は「利用者に無断でCPUを提供」させた後で表示されるものだからです。目に映ったときは既に全てが終わっていて、Webサイトの管理者は既に利益を受け取っています。一定時間ごとに(利用者に無断で)更新される広告や、動画を流す広告も存在します。性質上Coinhiveとなんら変わるところがないと考えます。むしろ、広告はより大きな通信を必要としますから、Coinhiveの利用が広告表示に先んじて罪に問われるということは実際に使用される通信費の感覚と一致しません。「気分」「なんとなく」の法解釈がなされたと推察せざるを得ないのは、Web広告が起訴されずに済んでいる理由が他にないからです。
Web広告を拒絶する機会はありません。ページを表示するまで広告が存在するかどうか未知であるからです。逆に、Coinhiveはブラウザでスクリプトの動作を停止しておけば完全に拒絶することが出来ます。そもそも拒絶したいと思う人が存在するのかどうかというのも議論されていないように思います。誰を守るための判決だったのでしょうか。
広告以外にも、画面には表示されない機能がWebページの維持に使用されており、どう使おうが責められるものではありません。なぜなら、実害が及ばないように、PCが破壊されないようにという世界的な合意の下でWebブラウザが設計されているからです。危険が発生する機能、例えば、ブラウザがカメラにアクセスする際には警告が表示されるようになっています。
スクリプトによりCPUが50%使用されようが100%使用されようが、それに憤りはしても罪として認識するのは無理があります。ただ「CPUを100%使用されると困るだろう」という良識のもと動作設定がされるのみで、Webページを公開する人物の一存で決まるものですし、決めていいものです。
仮にもって有罪という判決が最終的に下されるのであれば、何が有罪で何が有罪では無いかという判断についてWeb技術の一要素ずつを明確にし、社会的受容性のあるなしを事前に国民に提示する義務がある筈です。さもなければ、Web開発者は日本から逃れない限り何もできなくなります。 - 一般企業のホームページは既に、マーケティングとそれに伴う利潤の為に様々なスクリプトをWebサイトに埋め込んでいます。そしてそれは悪事ではないし、インターネットの意図に照らしてもなんら責められるものではありません。仮にCoinhiveが罪であるとすれば、私たち(インターネットを利用する全ての人)はそれら全ての企業を相手取り訴訟を起こすことが可能となるでしょう。NPOではない企業がホームページを公開することは、どうあがいたところで根源的には利益を得るためだからです。
「私は、自分がどのページを何秒観ていたかという情報を知られたくなかった」と言ってしまえばたちどころに罪が成立します。ホームページの公開には訴訟のリスクが伴うということになります。 - Coinhiveは無断で実行されていません。ブラウザ上で実行されるスクリプトのすべては利用者の端末に保存されており、自由に閲覧することが出来ます。それを「無断でCPUを利用された」とするのは、心情的には理解できますがフェアではありません。全ては明示されていますし、そこに書いてあることが理解できないのであれば理解できないと自身で認識してインターネットを利用するべきです。そこで発生する不利益を容認できないのであれば、インターネットの利用を免許制にし、法的に規制する必要があるでしょう。なぜならWebページを公開している人物は閲覧者のインターネットリテラシーについて事前に知ることが出来ないからです。日本語で「このサイトはCoinhiveを利用しています」と注意書きをしたとして、日本語を読むことが出来ない人にとってはそれを知るすべはありません。スクリプトも同じことで、読めば読むことが出来ますし、読めないものが実行される危険は有り得ません。知り得ない通信が発生することもありません。だからこそ件のサイトがCoinhiveを使用していることが分かったと言えます。
- インターネットはそもそも、その参加者に利益を与えるための仕組みではありません。単なる通信の取り決めと、その実装です。そのうえで利用者の不利益を語るのであれば、まずインターネットがどうあるべきかという法的な見解が必要です。
インターネットは社会が用意したインフラではなく、参加者により善意で維持され、自由に参加できるシステムに過ぎません。ユーザー保護の規範はインターネット上の合意以上に厳しくすることは原理的にはできません。 - 目的犯性について、「無断でマイニングしている」という批判があったことは批判でしかなく、それが「良い/良くない」という判断はできこそすれ、コードの保管行為が法に触れるという考えに繋げることは不可能です。なぜなら前例が無いからで、Coinhiveが不正指令電磁的記録と判断しうるだけの情報を得ることは当時できず、そもそもCoinhiveが不正指令電磁的記録であるかどうかは今なお議論されている段階であり、しかもWebページを運営する上での資金と自らの労働に対する対価を負担してもらいたいという社会的に容認されうる動機であったからです。
Coinhiveの提供する機能が不正性を有するという根拠が分かりません。「社会的に許容されていない」という統計的なデータを明示しない限り違法性を問うことはできないと考えます。むしろ、本件の裁判費用を募る呼びかけに1044名から一千百万円以上の寄付が数日のうちに(私が寄付の呼びかけに気づくよりも早く)集まったことは、少なくとも私を含めて1045名以上が許容しているという何よりの証拠と考えます。
どういう理屈で何をどのような基準で以て裁こうとしているのかが抽象的にしか明示されておらず、それゆえに私がいつか意味も分からずに逮捕されるという未来が容易に想像できます。寄付や意見書の総量は、立法・行政・司法への不信不安に比例するものです。
私が上記の意見を申し上げるのは「インターネットの自由」だとかの精神的な文脈を支持するためではありません。ただ純粋にインターネットの利用者、ひいては日本国民に発生する不利益を危惧しての意見です。被告人が有罪になることは、どの方面に対してもこの先のメリットがないと断言できます。
検察と東京高等裁判所の判断はインターネットという情報基盤の設計思想、意図を大きく誤解しているもので、無理にその誤解を支持しようとすれば「そのように設計されたインターネットを別に用意しなければならない」ほどのものです。インターネットは、検察や東京高等裁判所の思い描いているようなものではありません。したがって、それら根本的な誤解さえ氷解すれば今回の起訴の意味の不明さは自然と理解できるものと考えております。
例えば「コンピュータセキュリティ領域」のプロフェッショナルであっても、ブロックチェーン技術や仮想通貨、インターネット、Web広告に精通しているものではありません。技術について正しい判断、正しい行動をするには、各技術要素に対する正しい認識と理解が必要です。「知らないと判断できない」のは、本当です。知らないまま(あるいは知っているつもりで)判断するのは魔女狩りと同じです。
技術は一日にしてなるものではなく、それに付随する法律ということで判断が難しいところもあるとは思いますが、とにかく本件の被告人が有罪とされることは国益を大きく損なうものと確信しております。
以上です。
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