※妄言

◆流通

俺の世界における未来では、コメは全ての状態で出回っている。籾摺り精米機能付きの炊飯器が売られている。

籾は「1モミーヌ」(白米にしたときに1合となる単位)ずつ真空パックされていて、その真空パックごと炊飯器にセットして水を入れるとメシが炊ける。

昔は白米の状態でコメが売られていたのだが、やはり鮮度を保つことが難しいし、残存するヌカを取り除くために水で洗わねばならなかった。無洗米という「洗わずに炊ける米」も開発されたが、何より自由度が低い。

自由度とは何か。それは旧人類が意識すらしないような「コメの食い方」についての自由度だった。

◆ヌカ

玄米食から白米食に移ったことが脚気の原因となったことはコメ業界(存否不明)では有名なことであるが、やはり米のヌカ(ブラン)と胚芽には多くの栄養が含まれている。

精米時に剥がれ落ちるその栄養の宝庫「ヌカ」を不法にせしめ、ぺろぺろ舐めたり鼻からキメたりタケノコの灰汁を抜いたりコンポストして家庭菜園したりぬか床にしておナスを漬けて近所に配ったり、でも「精米料」とか言ってお金をとっててズルい闇の秘密結社があった。

光の集団訴訟により滅ぼされたわけであるが、そのニュースが全国的に報道され、みんな「へー。ヌカすげぇ。」っつってコメの解放宣言に向けた活動が始まった。「コメに自由を!」という捻りゼロのシュプレヒコールが各地でなされ、汚職と天下りとヌカにまみれたコメ財閥は…えーと、爆発した。

◆籾元年

消費者どもが「籾で」「玄米で」「いや、白米で良かったんだけど。何わけのわからん活動してくれてんの。」とか様々な勝手を言いやがるものだから、新しく新設(重言)された「コメ府」もあきれかえってしまった。

めんどくせぇ

「コメ府だより 2052年13月号」より

一同納得。

だから「籾のままが一番自由度高いし鮮度が保てるよね」という話になったが、「鮮度鮮度って言ってるけど、コメの鮮度ってなんだよ。この守鮮度が。(激うまギャグ)」「精米とか面倒くさいだろ。やっぱり白米がNo.1。」派もいて、多数決で決めることになった。

「定刻に外に寝っ転がって手を挙げている/挙げていない人」を衛星写真によりカウントして多数決を取った。

結果、その日は曇ってて衛星写真が撮れなかったので、「あはは、撮れてないじゃん。」とか言いながらひとしきり笑って、担当者を島流しにし、代表者を決めて殴り合いをすることになった。

白米派はプロボクサー、かたや籾派は先端にニトログリセリンの詰まった鉄パイプを持ったニシローランドゴリラをそれぞれ連れてきて、ゴング前に決着がついた。

あ、うん。いや、死ぬし。

業界関係者談

そうして、広く一般に籾が流通することになる。

◆炊飯器

精米したコメを販売した場合は白米税が900%課税されるもので、籾しか店頭に並ばなくなった。

籾摺り・精米機が飛ぶように売れたが、当然ながら白物家電メーカーが目を付けた。

そして「精炊一体型」の炊飯器が開発されたのであった。

機種にもよるが、もみ殻は内部の成型機によりフレーク状になってコロンと出てくる。ヌカの成分は大抵、粉状になって出てくる。

▼メリット

まず、なんか新鮮である。食べ比べてもよぐわがんにゃいけど、新鮮である。

つぎに、籾からコメを炊くわけであるから、「玄米1白米9」のような指定が出来るものや、胚芽を残した精米を売りにした機種が近頃は出てきている。

高級なものだと残留農薬を検出できる機構が組み込まれていたり、亜糊粉層を残した精米が可能だったりする。

玄米がより身近になることで国民の栄養状態が改善され、よくわからん体調不良を訴えていた人が減少した。食物繊維の摂取量が増加したために腸内環境が改善され、便秘、食道がん、肥満、アレルギー体質が改善されたという報告がなされている。[誰によって?]

玄米は、自然と白米よりも咀嚼回数が増えるので、脳の血流が増えて、えーと、サイコパワーを蓄えることができるので、サイコクラッシャーを放つことが出来るようになります。

咀嚼は単に食物を粉砕し、唾液と混ぜ、嚥下(えんげ)しやすくするのみでなく、口腔内を刺激することにより各臓器の消化液の分泌を促進し、口腔内の自浄を行い、また、食物と共に口腔内に進入した異物の除去などの役割がある。また、脳内の血液量の増加、覚醒効果やリラックス効果、噛むことは歯を丈夫にするだけでなく、肥満、ぼけ、視力低下、姿勢悪化、虫歯、ガンなどを予防し、内臓の働きを助け、大脳の働きを活発にし、精神を安定させ、ダイエット効果もある。 何より食事を美味しく食べられるなど効果は計り知れない。 そしてよく噛むことで顎の筋肉を使うため、顎が引き締まり顔がすっきりするとも言われる。

咀嚼 – wikipedia

お得。全てが正しいかと問われると俺にはわからないが。

また、企業が保持する大規模精米機械では、設備投資の利益回収に時間がかかってしまう。つまり設備の更新にラグが発生してしまうのだ。それを各家庭に分散することが可能となったため、精米技術はまさにめまぐるしく発展している。

▼デメリット

籾付きで運輸、備蓄するから、コストがかかる。

大量のコメを工業的に精米したほうが高効率だという意見もある。

また、産地を気にせずに白目をむきながら食っていれば良かっただけの「米」について、ある程度真剣に考えなければならなくなってしまった。脳のメモリが足りていない人類は思考のオーバーヒートを起こし、死んでいった。新潟には「コメ改革死没者慰霊碑」がある。

ヌカに興味のない人間もいるため、その人らにとってはゴミが多く出て邪魔だ。だが、自家発電くん(ゴミを投げ込むと対消滅によって損失ゼロでエネルギーに変換してくれるすごいやつ)が普及している現代であれば無駄にはならないだろう。

◆結論

かようにコメ文化の変革がなされ、人類の食文化史に新たな1ページが刻まれたのであった。

うん。自分で書いておいてなんだが、なにこの文章。

そう。「玄米が基本にならねぇかなこの世界は」と思って書いた。玄米混じってるご飯のほうが好き。